読書雑談(精神科医N)

読書雑談(精神科医N)

先日ご紹介した、精神科医の名越康文先生参加の「Detroit」ゲーム実況動画のアップ分は全て視聴したんですけど、何か一冊著書も読んでみたいなぁとアマゾンを調べていて、「一番新しい著作」ということと「専門性の高いものよりも、エッセイ風のものを読んでみたい」という目的から、本書を購入しました。

結論から言うと「大当たり」で、オシャレな装丁で定期的にめくりたくなるという点で紙の書籍で買っておいて良かったなーということと、人にもプレゼントしたくなるような「誰もが関心のあるテーマについて、一味違った切り口で、気づきを与えてくれる」という2点が印象に残っています。

本書の基本的なフォーマットは、「見開き2ページで完結」していて、右ページに「ひとりだから孤独なんじゃない」と一言掲げて、左ページで「孤独が苦しいのは、ひとりぼっちだからではありません。頭の中が他人の声でいっぱいで、自分の身体の声を聞けなくなっているから、苦しいのです」とその意図するところを説明するスタイルです。

「自分の身体の声を聞けない」という部分はちょっとよく分からないのですが、「孤独の苦しさは、他人の声で頭がいっぱいだから」という発想はなるほどなぁ・・・と、これだけでも本書を買った価値がありました。だって、よくよく考えれば、ゲームをやりまくったり、漫画やドラマに没頭したり、ジムで走ったりしている時は、「孤独で苦しい」なんて思わないですもん。まー、だいたい孤独を感じるのは、夜寝る前にインスタを開いたりして、「世の中の人はどうしてこんなに人生キラキラしてるんだろ・・・」といった感情が沸いてくる時だったりするので、SNSというかネットって良くないなーなんて改めて思うわけです。

で、本書は「見開き2ページ」に拘らず、テーマによっては先生の説明が4~5ページに渡っているものもあります。「見開き2ページ」で統一すると、かつての老子ブームの書籍によくあった「自然にまかせればいいんだよ」的なスピリチュアル本っぽくなりがちで、むしろスタイルに固執しない点が、本書の特徴になっている気がします。

新しい本だから、新しい事象にも対応していて、本書を読み終わった後に、例の「ドラマ」をめぐる痛ましい出来事とネットの状況についても考えさせられる部分もあります。他にも、「人がネットを通じて怒りを表現することの意味」から、「人間関係の距離感に悩んでしまう背景」とか、私自身、猛省しなきゃいけない気づきを得られたことは収穫でした。

さて、なぜ著者名が「精神科医N」かと言うと、本書は、名越先生の過去13年間のツイートから編集者がピックアップしたものを書籍化したものなんですが、先生自身が忘れている発言も多々あったこと、そしてツイートの中には「頭で考えて言葉にして綴ったものだけでなく、『ふっと降りてきた言葉』もあった」のだそうです。先生にとっては、「まるで他人が書いた本を読んでいるようで新鮮だった」ことから、「名越康文の言葉」というより「精神科医Nの言葉」としてまとめようという考えに至ったそうです。

抽象度の高いものもあれば、具体的なものもあり、そのバランス感覚が私にはちょうどよく、とにかく読みやすい。専門的な本はすでに何冊も書かれているので、今後そっちも買うことになると思いますが、本書を一冊目に選んで大正解だったなと思います。

では、また明日!

Jun


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