
少し前の話になりますが、森岡毅さんの『苦しかったときの話をしようか』を読了しました。
動画は何本か視聴していたんですが、著書を読むのは初めて。内容としては「就活を控えた娘のために書き留めていたメモ」で、これをたまたま読んだ編集者から「ぜひ書籍化を!」と強く勧められたという経緯があります。
・第1章「やりたいことが分からなくて悩む君へ」→就活前の心構え
・第2章「学校では教えてくれない世界の秘密」→現代資本主義社会における企業と個人
・第3章「自分の強みをどう知るか」→自己分析して強みを発掘するための手法
・第4章「自己をマーケティングせよ!」→具体的な自己PRの方法
・第5章「苦しかったときの話をしようか」→会社員時代に父が経験した嫌がらせ等々
・第6章「自分の”弱さ”とどう向き合うのか?」→「強さをしっかり自覚しておけ」というお話
各章をざっくりまとめるとこんな内容です。先に動画を見ておいた方が本書に入っていきやすいですね。特に動画の18分あたりから、「自分の好きなこと・得意なこと」を発見するにあたって、「名詞ではなく動詞に注目せよ」というのが非常にユニークな手法です。例えば、
・私はフィギュアスケートが好きだ
これだと「フィギュアスケート」という名詞が「好きの対象」になるわけですが、それだと自分の強み・得意なことを「発見」したことにはなりません。そこで、一歩踏み込んで考えてみるわけです。
・羽生結弦さんの動画を人に紹介して喜ばれるのが好き
・羽生結弦さんの最新情報を共有するコミュニティを作ってお友達と交流するのが好き
・羽生結弦さんの発言を考察し、スケート・ショーの内容を分析するのが好き
・羽生結弦さんのショー目的で日本各地を旅行するのが好き
たしかに「羽生結弦さん」という共通テーマはあれど、このように「動詞に注目」することで、その中で特に自分は何をするのが好きなのかが見えてくる。
しかも、森岡さんは「好きなこと」を書き出した上で、「C: Communication」「T: Thinking」「L: Leadership」の3つの分類せよと話しています。「考察・分析」が好きなら「T」に入るし、「コミュニティを作って交流」というのは「T」と「L」の両方の要素を持っていると言えます。
以上は動画でも話されていた内容で、これが本書の第3章でより詳しく解説されていて、その分析を行ったうえで、就活でどうPRすべきかが第4章で説明されています。
で、ここまでの内容は、言っちゃアレですが「成功者のお説教」っぽい所もある。それだけで終わらないのが本書の良い所で、第5章で話されている「嫌がらせ」のエピソードを踏まえて、結局はやっぱり「自分の強み」が支えになってくるという話に帰結します。
自分の強み・適性を自分自身で分かっていないと、嫌な仕事を仕方なく続ける生活を選ぶことになり、心身を病んでいくことになりかねない。会社に留まって異動願いを出すにせよ、会社を辞めて転職するにせよ、「自分の強み」をはっきり理解しておく作業は無駄にはなりません。
本書の内容って、就活を控えた学生や、転職を考えているビジネスパーソンのための「マニュアル」ではなく、それこそ高校生ぐらいから読んでおいて、「自分の強み」を把握するための作業を日頃からやっておくのはとても良いことだなと思うのです。
それも、子どもにホイってプレゼントして「就活がんばりなさいよ」じゃなくて、親も一読して、本の内容をフランクに話し合えるのが理想的な家族なのかぁ・・・と。でも、著者の娘さんがその後どうなったのかは知りません。もしかりに後日談を出版したところで「自慢話」になりかねないので、本書一冊で完結というのが、美しくかつ賢明な判断なのかなという気もします。
メタルジョギング・チャレンジは220日目。ANGRAの『Temple Of Shadows』(2004年9月)です。ブラジル出身のメロディックスピードメタルバンドで、1993年発表の1作目『Angels Cry』で衝撃のデビューを飾り、私も当時高校生だったんですけど、どハマりしましたね。特に同作に収録されていた「Carry On」は、当時のメタルファンなら知らぬ者なし!というぐらい彼らの代表曲となりました。
アンドレ・マトス(Vo)の瑞々しいハイトーンボイスと、若きギターヒーローとして注目されたキコ・ルーレイロの超絶技巧という「看板」がありながら、「メロスピ」というジャンルに安住せず、2作目以降はブラジルの土着のリズムを取り入れたり、音楽性自体はいろいろとチャレンジしていた印象です。
で、本作は二代目ヴォーカルのエドゥ・ファラスキ参加の2作目で、当時の私は「メロスピ」と疎遠になっていたこともあり、今回初めてアルバムを通して聴いたんですけど、たしかに「最高傑作」と呼ばれるのも納得の興味深い仕上がりです。本作では、明確な「メロスピ」路線の曲は2曲目の「Spread Your Fire」ぐらいで、続く3曲目の「Angels And Demons」は明らかにDream Theater的なプログレハードの影響がたっぷりで、「このアルバムどうなっちゃうの?」と。
で、ジムで走りながら折り返しの30分を超えたあたり、7曲目の「The Shadow Hunter」ではフラメンコ調のアコースティックギターに耳を奪われ、そこからシンフォニックメタルにグッと舵を切ります。まるで人が変ったというか、別バンド・別作品ですね。でも、そこからがぜん、エドゥの深みのある声質がドンピシャにハマっていて、たしかにこの路線だと前任のアンドレのどこか危なっかしいハイトーンだと表現しきれない音楽性かもしれません。
特に7曲目以降の楽曲のレベルが高く、アイデアの引き出しも多く、「こういうバンドなの?」と90年代の彼らの先入観をぶっ壊されるクオリティの高さなんですが、でも典型的な「メロスピ」を求める向きにはいまいち「刺さらない」かもしれません。個人的にはいい意味で予想を裏切ってくれる名盤だと思いますね。
では、また明日!
Jun
