ここ数日はジョギングで身体が疲れて、読書までする体力が残っていなかったんですが、ようやく身体が慣れてきたので、夜読書を再開しました。コツコツ買い揃えていた矢能シリーズ以外の木内一裕さんの作品の中から、第一作『藁の盾』を読んでみました。めっちゃ面白くて、興奮冷めやらず、今日はジムをお休みしてこれを書いています。作品単体の出来で言うと、矢能シリーズより評価する人がいても不思議じゃありません。これがデビュー作なら、そりゃ小説家一本で行くわけだ!と納得のクオリティです。
本作、大沢たかお主演で映画化されているんですけど、私はこのPVを見ないでまず読了しました。てか、文庫本に丸善の紙カバーをすぐにかけて読み始めたので、読み終わってから、裏カバーに記載の出演キャストに気づいたぐらいです。
ざっくりしたあらすじだけ言うと、二人の少女の殺害容疑の男に、10億円の懸賞金がかけられます。犠牲者の少女のうちの一人が大資産家の孫で、その資産家は「その男を殺してくれたら10億円支払います」と特設サイト&専用ダイヤルも設置して告知します。「そんなサイト、すぐに閉鎖になるのでは?」と私も思ったんですが、この資産家は各方面にいろんなパイプを持つ有力者のため、サイトは存続しながら話は進みます。まもなく、男が福岡市内の警察署に自首をするわけですが、その男を東京まで移送しなければならない。その移送を特別に組織された5人の警察官で行うわけですが・・・。
本作は2004年に単行本で発売されたんですが、20年前を感じさせるのは「携帯電話でiモードを使っている」ってだけで、設定自体はまったく古さを感じさせません。てか、闇バイトだ特殊詐欺だ何だって、はした金であっても犯罪に手を染めるハードルが下がっている昨今ですから、一攫千金を狙うバカが現れてもおかしくないですからね。
そうそう、今回の解説の人も指摘していたのは、木内小説の独特な描写術なんですよね。
漫画を描き、映画を撮ったきうちさんの書いた小説は、人物や情景の描写が簡潔かつ正確で、彼らが立っている位置や動いている方向まではっきりつかめ、誰が何をやっているのか判らなくなるような瞬間がありません。一度読み終えると、頭の中に完全な映画が一本撮りあがるようにできています。役者の演技から、画面の質感から、音から、僕にはすべて思い描けます。
もともと漫画家だから、「脳内でビジュアルでイメージしたことを忠実に言語化している」ということなんでしょうね。これって当たり前のようでいて、誰もが実践しているわけじゃない。PCでもスマホでも、文字を打ちながらうんうん唸って書いていると、結局自分の文面ばかりみて、脳内イメージがおそろかになりがちです。「誰でもわかりやすい文章」って、実は作文のテクニックよりも、その辺りが大事なのかもしれません。
矢能シリーズ以外も面白いということが分かったのは収穫です。また他の作品を読み終えたらご紹介したいと思います。
では、また明日!
Jun