「羽生結弦 PROFESSIONAL Season 2」(2)

「羽生結弦 PROFESSIONAL Season 2」(2)

今日も「PROFESSIONAL Season 2」から、羽生さんの独占インタビューに注目してみます。

今回はかなりの長さのインタビューで、例えば、RE_PRAYの「破滅の後に、髪をスタイリングし直す地獄話」とか、Notte Stellata 2024における「カルミナを選んだ経緯」とか初出の話もあったんですけど、個人的には、「なんだか久々に本格的なスケートのお話を羽生さんから聞けたなぁ・・・」という意味で、FaOIの「ミーティア」と「HIGH PRESSURE」のコレオの話が面白かったですね。こちらに集中したいと思います。

たとえば今回、ファンタジーのフィナーレの『HIGH PRESSURE』で自分のパートがあって、毎回アドリブで結構違っていたんですけど、あそこの後ろで鳴っている打楽器の音たちをすべて足で拾うとなると相当早いんですよ(笑)。でもそれを無意識にやっちゃうし、ちっちゃい頃からそういうのが好きではある、みたいな。・・・だからその点はちょっとダンサーに近いのかもしれない。あとたぶん、このスタイルに行き着いたのはアレクセイ・ヤグディンとカート・ブラウニングのおかげなんだろうなっていうのは思います。ヤグディンの『ウィンター』(01-02年ショートプログラム)の一番有名なトウステップのところ。あそこは音を拾ってああしているかと言われたら、たぶんリズム帯じゃなくてバイオリンの音が駆け上がっていくところに合わせて盛り上がりを作りたくてあれをやっているんだけれども、でもそれをリズムに転用しているのが僕で

実は、『ミーティア』を作る時、かなりヤグディンを見ていて。本当に(アイデアが)浮かばなかったんで(笑)。最初の感じとかすごく『グラディエーター』の最初のシーンでこうやって剣を持ってぐるっと(上体を)回すんですけど、あれを結構参考にしていたりとかしますね。フィギュアで『ミーティア』を作る時に、かっこいい振付けにしたいと思ったんですよ。そもそもかっこいい振付けとは?と考えた時に、最初に浮かんだのはやっぱりヤグディンだったんですよね、僕の中では

幕張公演の『HIGH PRESSURE』と『ミーティア』をもう一度見て、ヤグディンの動画もチェックしました。私自身、実はソルトレーク五輪のフィギュアの記憶って皆無なんですよ。そもそもこの五輪は日本代表全体でメダル2個(金は無し)という結果でしたから、たぶん五輪自体ほとんど見ていなかったんだと思います。はっきりフィギュアの記憶があるのは2006年のトリノ五輪以降になります。

だから現役時代のヤグディンの演技をたぶん生放送では見たことが無くて、「タラソワさんの隣りにいる人でしょ?」ってニワカ丸出しの認識に留まっているので、この2つの演技は非常に楽しく視聴しました。いまのスケートと比べるとさすがに動きがスローですけど、ガッシリした体型でジャンプはしっかりしているし、オーラもある。こういう身体つきのスケーターって、もしかするとパトリック・チャンぐらいが最後ではないですか?いまの男子って細いか、小さいか、その両方かって感じで、じゃないと、おそらく体型的にフィギュアでトップにはなれないんだと思います。

たしかに、羽生さんが言及している部分を「照合」してみると、影響を受けているのはよく分かります。率直に言って羽生さんが20年以上前のフィギュアを研究していることに驚きを感じていて、でも、これぞまさに「温故知新」というべきなのか、結局セルフコレオでゼロから一人で創り上げていくのであれば、「歴史に学ぶ」ことから避けては通れないんだと思います。

自分でコレオを作っていていつも思うんですけど、僕って足から入るプログラムが多くて。『阿修羅(ちゃん)』もそうだし、GIFTでもそうだったんですけど、足でリズムを刻みながら上半身(の振り)を付けていく方が強いんですよね。だから上半身が主導じゃないというか、上半身がなかなかできあがらないことが多いんです

まぁ、『阿修羅ちゃん』は分かるんですけど、この部分を読んでから『ミーティア』の映像を見てみても、「上半身が主導じゃない」とはまったく信じられなかったですね。それはヤグディンの『グラディエーター』風の所を言ってるんじゃなくて、その後の鋭角的な腕の振りとか、「当然これが先にあるものなんじゃないの?」という印象を強く受けますね。プログラムって、完成形を見るだけじゃ分からないものなんだなぁと・・・興味深く感じました。

ふと思ったのは、かつて織田君が自著で「この選手のこの演技がすごい!」的な解説をしていたことがあって、当然羽生さんにそういう仕事が依頼されていないわけがないんですが、雑誌・書籍・テレビを問わず、「解説」に類する話はすべて断っているんでしょうね。でも、こういう所で「ヤグディン論」が出てきたのは嬉しい驚きでした。ちなみに、ヤグディンの「wiki」には、『グラディエーター』の振付がモロゾフで、『ウィンター』がタラソワさんとモロゾフと表記されてますね。懐かしい名前ですね。元気にしているんでしょうか?

では、また明日!

Jun


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