2024年11月25日発売。定価「950円」。
久々に興奮しながら読み進めたインタビュー&記事でした。すでに本誌の記事をご一読された方も、「はやくこの素晴らしさを共有して語り合いたい!」と思われていたことでしょう。
表紙でのこの扱いなんで、「羽生結弦の知名度」に便乗したなんちゃって記事かと思われていた方、その先入観は完全に裏切られます。「独占インタビュー」「RE_PRAY佐賀における佐賀サイドへの取材」「能登チャリティー演技会における関係者への取材」の3本柱で、合計10ぺージ。これプラス「編集部から」(14ページ)でも言及されているのでお忘れなく。
良記事の要素というのは、いかに「未知の情報」を引き出せているかが大切で、上述の「独占インタ」「佐賀取材」「能登取材」の3企画全てがその点を満たしています。その驚きをぜひご自身の目で確かめていただきたいので、必ず購入してください。とにかく、内容面の資料的価値が高いので、電子版でも十分です。以下、羽生さんのインタから2点だけご紹介します。
(1)「遠くで見るから面白い」という東京ドームでの仕掛け
執筆者のクレジットは本誌編集部の山本舞衣記者。インタビューが始まる前の「リード文」から読ませる内容で、「ああこの人は、羽生結弦というスケーターに対して先入観なく情報収集し、正しい現状認識のもと、今回の取材に臨まれているんだな・・・」と分かります。そこからのやり取りはプロローグ→GIFT→RE_PRAYと、「お金を払って会場に足を運んだ観客の視点」から、それぞれのショーにおける羽生さんの「狙い」を引き出す内容が中心になります。
特に素晴らしいのは、「東京ドームは客席との距離が遠いからこそ、ELEVENPLAYのダンスとの共演が成立した」という羽生さんの発言を引き出せた点です。私なんかはRE_PRAY開催が発表された当初、「RE_PRAYでもELEVENPLAYや、あるいはGIFTバンドの参加もあるのか?」なんて考えていましたから。ということは、今後もドーム以外でのショーでは、あのような形の「共演」は厳しいってことですよね。やるとするならnotte stellataやFaOIのように奥のステージで演技・演奏してもらうしかないわけです。
(2)スケートが「個人的なものでなくなった」からこそ、「個人的な幸せ」に気づく
非常に哲学的というか、まるで社会理論のテーマになりそうな興味深い話も登場しました。羽生さん曰く、競技者時代のスケートというのはジャッジの採点に全てを委ねるもので、自分がどう評価されるかを考える日々。「自分が表現したいもの」よりも、「点数を稼ぎ勝つために、どういう曲を選び、どんな題材で何を表現したらいいか」を優先させていた。
一方で、プロ転向後というのは、自分でやりたいプログラムを制作し、アイスショーをプロデュースする過程で、「自分の内側から湧き上がる幸せ」が分かってきた。でも、そのショーは「みんなの力を借りてつくっていく」わけで、「スケートがいい意味で個人的なものじゃなくなっている」。チーム・スタッフという「大きな動き」の中にいるからこそ、「個人的な幸せが何なのかわかってきた気がする」とのこと。
この68頁の一番下の段の部分は一瞬難解で、何度か読み直してしまいましたよ。自分がやりたいことを「他者のニーズに合わせてビジネスとして成立させる」ためには、大きな責任が伴うということですね。企業経営者の話を聞いているみたいで面白かったですね。
あとは、69頁の一段目。ここはあえて引用しません。やっぱりそういうことを考えていたか・・・という発言を見事に引き出せています。これもしかしたら、フィギュアスケート界隈のライター・記者相手じゃないからこそ、率直に語ってくれたのかもしれません。
まだまだ語りたいことがたくさんありますが、この辺りで締めておきましょう。佐賀と能登の取材記事も素晴らしい仕上がりなので、ぜひ買いましょうね!
では、また明日!
Jun