「フィギュアスケート・マガジン 2019-2020 Vol.5 全日本選手権 特集号」(2)

「フィギュアスケート・マガジン 2019-2020 Vol.5 全日本選手権 特集号」(2)

本号の前回のレビューは「こちら」で。座談会を読んだ後は、冒頭から順番にめくっていきました。以下、気になった部分をメモとしてまとめておきます。

・今回の「2枚の両面ポスター」は、1枚目は「Otonalと、開会式のために会場入りする際のスーツ姿」。2枚目は「SEIMEIと、公式練習のために会場入りする時の上下黒ジャージー姿」。不調だったOriginを外して、他のスケーターとのショットも外して、ゆづオンリーで4枚選ぶ。さすがマガジン、ゆづファンの心に寄り添ったチョイスだなと感じました。

・そして「3頁」にも記載がありますが、座談会でも記者・カメラマンの間で一致していた意見として、「SPで110.72をマークしても表情は晴れなかった」という点。座談会では「疲労の中、責任感という、気持ちで滑りきったから」説や、「SPはノーミスして当たり前」説等が挙がっていましたが、それ以外の理由を考えてみました。

私はこのSPは現地で見ていましたが、まずもって、どこから弾が飛んでくるか分からない完全アウェイの全日本の採点ですし、「いつもほどの着氷ではなかった3Aで減点があるのではないか?」とスタンドから見ていて心配ではありました。羽生さん自身も、そこは不安だったのではないかと。あとはやはり、4T-3Tを前半に移した構成でノーミスしても「素直に喜べない」というのもありそうです。本人は「GOEを稼ぐための構成」と勝負に徹したプログラムであることを公言していましたからね。もちろん疲労という部分も大きいとは思います。

全日本のOriginをテレビで見ていて、私が「これは明らかにおかしい!」と異変を感じたのは、3本目のジャンプの3Lzがダブルに抜けた瞬間でした。冒頭の4Loと4Sで、ステップアウトや着氷が乱れることは、様々な要因によって起こりうることですが、他方で、3Lzでミスが出るというのは、あまり記憶がありません。

で、「密着ドキュメント」や「全日本選手権 6Days」でもレポートされていますが、12月19日(SP前日)の公式練習で、3Lzをパンクしているんですね。そして、20日(SP当日)のレポート(31頁)では、山口さんがこう記述しています。

いつも練習最初に跳ぶ3回転ルッツは、最初の1本が1回転(珍しい!)になり、2本目は着氷でよろけ、3本目でようやく成功。

その後、21日・22日の練習でこのジャンプをミスすることは無かったようですが、後半のジャンプでミスが相次いでいた、とされています。練習での3Lzのミスを「珍しい!」と山口さんが強調するほどなので、結果論ですけど、異変の兆候はあったのかもしれません。

・順番は前後しますが、この全日本では、Otonalの構成をこれまでの「4S 3A/4T-3T」から「4S 4T-3T/3A」に変更しましたが、「密着ドキュメント」(17頁)で、吉田記者は「Otonalの手直し」の部分に触れています。

・・・だからこそ、自ら振り付けを考えて構成を変更。構成を変えてわずか1週間、ほとんど練習を積めていない状態で仕上げてしまうところが羽生のすごみだろう。

いやいや、構成を変更したら、そこに慣れるために「余分に練習」が必要なはずで、ぜんぜん休めてないじゃん!と。開会式の後に羽生さんは「正直、大変でした。練習どころではなかったと言っても過言ではないぐらい大変だった」(15頁)と記者に答えていますけど、それは「練習をしていない」ということではないですよね。

もちろん、トリノからトロントに戻った後、Originのランスルーを何本もこなすような練習をこなせず、「疲労回復」が中心だったという意味で「練習どころではなかった」ということだと思いますが、「Otonalの手直し」が加わって、結局まともに休めずに、相当な無理が重なったのだなと想像できます。あまりに過酷すぎたと言わなければなりません。年末年始、しっかり休養を取ってくれていることを願いたいです。

明日は、「完全収録」以降を詳しく見ていくことにします。

では、また明日!

Jun


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コメント

  1. ととちゃん より:

    Otonalの手直しに、実際どの位時間を割いていたのでしょうね。昨シーズンのロステレFSで怪我のために構成を変えましたが、あれはぶっつけ本番でしたよね。脳内で確認しながら進めて、あの出来。
    対して全日本は完璧な出来ではありましたが、羽生選手ならそんなに時間をかけなくてもあのレベルまで持って行けたのかも…と、これは私見に過ぎませんが。
    何れにせよ、表情は晴れず、疲労しきった様子が不安を残すキスクラでしたね。

    Originの3Lzは今シーズンからだったでしょうか?全日本だけでも昨シーズンの構成で3Loと4T-3ASeqにしていれば、など、つい考えてしまいますが、どんな状況でも最後まで攻めるのが羽生選手。次戦こそ、疲れのない状態で試合に臨んで欲しいです。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      今季3Lzのところは、昨シーズンは3Loが入っていました。大怪我の原因となったジャンプですから、トリプルも回避していましたね。

      まぁ、しかし、4CCはエントリー変更もあって、羽生さんも思いっきり「挑戦」してくれるんじゃないでしょうか。ネイサンが出てきてくれると、前哨戦としてはこれ以上ない場所になると思います。

  2. sennin より:

    今回はただの連戦疲労だけでなくGPFの後の身体に異変がおきたものと推測します。それで入国も遅くなったと私はみていてSP終了後のキスクラでの呼吸は尋常ではなかったです。でもまだそれはいいとして皆さんがモニター着用のことをいってますが、いつもは心臓の下に一つですね。21日の公式練習では胃の辺りにもう一つつけてます。でもスポニチのドキュメントでは切れのいい演技?と書いてあるしTVでも曲かけの演技がスムーズに見えました。22日の練習はジャージぬがなかったですね。曲かけは前日の方がよかったですが4ルッツ跳んだらしいので特段なことはなかったかと、さらに6分間練習でもそんなに異変は感じませんでした。私も本番の3ルッツですよね?あれから結弦くんらしからぬ崩れかたで、ベルトもみえるしモニターつけたまんま試合に出たのか?フリーのキスクラは立ち上がれないとジスランの肩に頭をつけてましたよね?
    体調不良がさらに何か起きたんだなと思いました。昌磨くんのインタが終わるまで壁に向かって呼吸を整えてるんですよ。そのあとインタが終わったら直ぐにトイレに入りました。ドーピングもあるでしょうが吸入したのかな?
    表彰式前にはご存じのように元気に二人に声をかけてました。試合後と違う人みたいでした。そしてマガジンの写真みて胸にテーピングがはっきり見えますね?もう私はそれ以上マガジンが読めないのです。こんなに辛くても誰にも明かさず負けを認めたんですから
    詳しいことはわかりませんがあの呼吸の乱れと顔色の悪さをみれば、持病の喘息がなんかの形であったのか?と考えても不思議ではありません。
    とてつもない体調不良のなかよく最後まで滑った。倒れなくてよかったとそれだけを感じた試合でした。私はずっとこの試合忘れないと思います。
    でも全日本は結弦くんが必要でした。みんな結弦くんを待ってたし結弦くんも仲間と楽しそうでしたよね?
    出場してくれてスケートみせてくれてありがとうという言葉しかないです。
    今回は体調が最悪でしたが4CCとワールドは体調万全で勝ちますので!
    さあ、次は表紙がオトナルの通信を待ってます。

    • Jun より:

      senninさま

      深い考察をありがとうございます!羽生さんがあまりに超人的な偉業を達成しているので、外野の人間は、喘息という大病と戦っていることを忘れてしまっていますよね。

      いずれにしても、しっかり休養をとって、4CCとワールドに挑んでくれることを期待しています。

  3. マリィ より:

    こんにちは
    体調が万全ならフリーも素晴らしく世界最高点が出た筈と断言出来ますね。
    originの最初のあたりの音で首を2回振るところでいつもズレることのない首の動きが少しズレていたので、あれ?おかしいなって思いました。
    全日本のフリーは疲れや体調の悪いところに雨が降ってたし体調的に最悪の試合だったことでしょう。
    季節の変わり目と雨の日は喘息出ますから。
    エキシのインタの時も胸を押さえたりして息の上がり方が尋常じゃないでしたね。
    今年はメディアも羽生くんをそっとしてあげましたでしょうか?
    4CCと世界選手権こそ体調やトラブルが起こりませんように。

    • Jun より:

      マリィさま

      羽生さんも、あのフリーの内容には決して納得していませんし、だからこそ、本人も体調の「本当のところ」は語らないのだと思います。

      当然、私たちも想像することしかできません。彼を実質的に守れるのはクリケットクラブのコーチだけですから、4CCとワールドに向けてしっかりサポートしてもらいたいです。

      年始早々、仕事でトラブって非常に不愉快な思いをしているのですが、そんな時こそ「羽生結弦を見ろ!」と自分自身を奮い立たせています。