「Sportiva (Passion On Ice)」(1)

「Sportiva (Passion On Ice)」(1)

2021年4月12日発売。定価「1,980円」。発売からかなり日にちが経ちましたが、こちらも感想をまとめておきます。

まず私が最初にめくったのは、武田双雲さんと能登さんの対談でした。武田さんって、羽生さんのことをどれぐらい知ってるのかな?と若干心配だったんですが、まったくの杞憂に終わりましたね。写真集のレビューについては「こちら」をどうぞ。

彼(羽生さん)には強さと弱さ、太さと細さ、みたいなものがあるじゃないですか。鬼気迫る表情をすることもあれば、仏様のような表情をすることもある。可愛らしかったり大人っぽかったり、無邪気だったりと、どっちやねん!と思わせるところがあって(笑)。

スター選手特有のふてぶてしく感じるくらいの強さもあれば、ガラスのように繊細な面もある。そういったギャップの激しさが同時に内在するような書をまず考えましたね。太いところと細いところの強弱、ゆっくり書いたり速く書いたりするスピード感。そういう部分を強めにしようと思ったのと、可愛らしく丸い部分と角張った部分を両方入れようという考えはなんとなくあったんですよ。書道家って、角の角度とか、抜くときも(筆の線が)2本で抜くか、3本で抜くかとかそういう部分にこだわるんですね。

プロの書道家の先生にこういうことを言うのもアレですが、個人的に、書道が上手な人は尊敬します。私は小学生の頃、夏休みの宿題で最後まで手をつけずに残ってしまうのが書道でした。教室の後ろに張らされるのが嫌で嫌で・・・。書道自体はあってもいいと思うんですが、いまでもあのような宿題ってあるんですかね?

この対談は武田さんのアトリエで行われていますが、アトリエの様子も誌面に写っていて、「健康」という書が見えるんですが、写真集の「光」の文字とぜんぜん違います。上で語られている「丸い部分」がまったく無く、キビキビとしていて引き締まったフォルムの字です。雑誌がお手元にある方は、ぜひチェックしてみてください。

この対談の中では、お二人が面白い視点で見解が一致します。

武田:今回の写真集のようなコラボレーションも、僕にとってはある意味プレッシャーになるわけですよ。僕のホームではない、完全にアウェイ。だけどやっぱりこの本を作っているみなさんや羽生選手の仲間になりたい。チームになって、歩調を合わせたい。でも、かしこまるのも変だし、「よし、俺が書いてやる」っていうのも変。大縄跳びにうまく入っていきたいなっていう感じでしょうか。あくまでも写真集の題字なので、僕が勝手に抱いている写真よりも、能登さんの写真を通して見た羽生選手の印象、世界観に合わせる。能登さんの写真って、ひとことで言うと「透明感」。能登さんがまったく見えない。エゴがゼロ。カメラマンの意図が見えないほど引き算をしているな、と感じますね。こだわりがないとかではないと思うんですけど、ニュートラルに写真を撮る方だなって。「どうだ!感」がないんですよね。

能登:その言葉は正直うれしいですね。常に結弦くんの素を切り取りたいと思いシャッターを押しているので。親戚のおじさん感があるのかもしれないですね。切り取っている視点が。

武田:親だとちょっと感情が入りすぎるからね(笑)。

私の印象では、じゃあ、田中さんや小海途さん、あるいは矢口さんや若杉さんと比べて、能登さんの写真が「透明」かというとちょっと分からないです。前も話したかもしれないですけど、例えば、女優やアイドルの写真集を作るとしたら、バリ島とか沖縄にモデルさんを連れていって、カメラマンの独占状態になるので、当然ながらカメラマンの「視点」が出やすい。

ところが、スポーツ専門のカメラマンは、基本的には試合のみで(フィギュアの場合はショーも)、与えられている条件は一緒ですから、写真自体に差は出にくい。どの写真をチョイスするか、誌面・紙面のレイアウトをどうするかが、大きな特徴となってきます。むしろ、腕の良いスポーツカメラマンほど「透明感」を求められているように思います。

でも、「親戚のおじさん感」というのは面白い表現ですね。私は能登さんと同世代なので、羽生さんとは親子ほどは年が離れてないから(藤井二冠だと親子ぐらいの差に重なってくるかもしれません)、「親戚のおじさん」というのはよく分かります。

私たちは、基本的に羽生さんの写真しか見ないですから(笑)、神カメラマンたちの写真に差をつけるのは難しい。でも最近、読売新聞の若杉カメラマンが将棋の竜王戦を密着取材されていて、こんなにかっこいい振り駒の写真なんて見たことない!とビックリしましたね。

神カメラマンたちのフィギュア写真は、正直羽生さんしかあまり見たいとは思わないですが、他のジャンルの写真をどのように撮るのかは興味があります。まぁ、でも、羽生さんが現役のうちは、羽生さんに全集中していただきたいですね。

では、また明日!

Jun


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