JGPスロベニア(男子フリー)感想

JGPスロベニア(男子フリー)感想

リザルト関係は「こちら」。フィギュアスケート速報さんは「こちら」で。金曜深夜に行われたんですが、最終グループ前に奇跡的に目が覚めて、6人全員ライストで見ることができました。

島田君。デニス君はさいたまで「ラスト・サムライ」をやっていたわけですが、ランビさんはそれを島田君にやらせない所が、「日本人の気持ちをよくわかっててるなぁ」と感心しました。そして、このピアソラの「ブエノスアイレスの冬」ですけど、誰もが感じているでしょうが、ランビさんがこの衣装を着てこのちょっとキザな振付で演技をしているような錯覚をしてしまいます。もちろん、島田君がスイスに行く前は、ランビさんと共通するものなんて無かったはずで、だからものすごく努力をしているんでしょうね。

このフリー演技自体は島田君のベストパフォーマンスではなかったですが、今季の彼はとにかく「抜けない、コケない」という所が素晴らしい。単に背が伸びただけじゃなくて、身体が強くなったと思います。もちろんメンタルも安定しているから、崩れないのでしょうね。3位に入って、ポイントは24点。一戦目が220.45、この試合が212.95と、スコア自体はしっかり出しているので、おそらくファイナル進出は大丈夫でしょう。ランビ先生、バンクーバーのファイナルには来てくださいね!

ダニエリャン。顔の濃さもあって、「ハビっぽい!」という意見を見かけたことがあるんですが、でも、そもそもハビは14歳の時からこんなにすごかったの?という話ですよね。この選手のプログラムは、つなぎは濃いし、ジャンプのランディング後の動きも滑らかで、とにかく完成度が高い。というより、すでに完成されていると言ってもいい。

ショートの時にも感じたんですが、本来難しいはずの動きをあまりに簡単に淡々とこなしていくので、緊張感というか起伏というか、メリハリが無いように見えてしまうのです。ものすごく贅沢な要求ではありますが・・・。だからもう、彼の場合はさっさと4回転を跳んで、「ダイナミズム」の部分をジャンプで表現するしか無いように思います。凄い選手なんだけど、ハラハラ感がほしいなぁ・・・。ミスらしい所は3連コンボの部分だけなので、141.19というさすがの高得点。ショートの出遅れがなければ表彰台でしたね。次戦も出場するようなので、楽しみです。

コンラッド君。ダニエリャンとあまりに対照的なスケートで、ライストで見ていてビックリしました。とにかく根性・根性・根性という演技。クワド2本、3Aを2本着氷して、見事な内容ではあるんですが、他のジャンプを堪えすぎていて、コツコツジワジワ減点されてしまいました。

島田君に0.01点及ばず4位というのは、これがいわゆる「忖度採点ですか?」なんて見られてしまいそうですが、でも、コンラッド君自身が一戦目から頑張らないと(4位)ダメですよね。キスクラでバーケルコーチが笑ってましたね。

グメンニク。コンラッドからのロミジュリ2連発です。カナダ大会で決めていた、3A-3Loはセカンドで乱れましたが、ミスらしいミスはこれと3連コンボのセカンドのURぐらいで、安定していますね。

ダニエリャンと何が違うのかな?と考えながら、プロトコルを見てみました。すると、けっこう特徴が出ています。グメンニクはスピン・ステップすべてレベル4を揃えていて取りこぼしなし。一方、ダニエリャンはショートに続いてステップはレベル2で、スピンもレベル3がある。しかし、ジャンプの加点ということだと、ダニエリャンの方が圧倒的に優っている。フリーのスコア自体は141点台で僅差なんですけど、どっちもスケーターとしてのタイプは似ているので、やはり専門的な知識が無いとこの辺りの判別は難しいようです。

樋渡君。カナダ大会はオータムよりも前だったのですっかり忘れていたんですが、なんだかOriginみたいな衣装で親近感が沸きますね。そして、ロシアの2人の若手選手を見た後だと、やっぱり全然違いますね。ロシアの二人はけっこう細かく振付が決められているのに対して、樋渡君はもう少しアバウトというか、スケーティングの滑らかさと、彼の場合は身体の柔軟性を生かした技を配置して、あとはガツンとジャンプを跳ぶと。タイプ的にはジェイソンのような方向性を目指しているのかな、という気もします。

ただ、もう少しジャンプの助走が短いとなぁ・・・と。そう考えると、同じアメリカという括りでいえば、プルキネンの方が巧いなぁとは思います。あと、細かいミスが必ずある選手なので、そこがきっちりコントロールされると、ファイナルの表彰台も見えてきますね。現状では、グメンニク、来週登場するモザレフ、そしてプルキネンの力がちょっと抜けていると私は見ています。

ゴロニツキー。ショートの3Aの素晴らしさには度肝を抜かれましたが、どうもこの選手は2本揃えられるような気がしなかったので、やはりフリーは苦労しましたね。ただ、このメンバーの中で最終グループに残って、しかも最終滑走というのは本当に立派です。本人も自信と手応えを得たんじゃないかと思います。

明日は女子の方を・・・。結果は残念ではありましたが、しっかり見ていきたいと思います。

では、また明日!

Jun

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コメント

  1. ととちゃん より:

    今季は本当にロミジュリが多いですね。
    立て続けだとジャッジも若干飽きるのでは?と心配します。

    個人的にはコンラッドよりグメンニクの編曲と振り付けが好みです。特に後半がいいなと思いました。
    で、樋渡くん、ここに来て衣装に既視感が…(笑)。彼の演技はダイナミックでいいですね。

    そして高志郎くん!やりましたね!ファイナルは運次第かと思っていましたが、大丈夫そうなんですね?ランビ先生が高志郎くんと一緒にリンクサイドで飛び跳ねる様子を是非見てみたいです。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      コンラッド君を見ていると、もう肉弾スケートというか、とにかくジャンプを跳ぶことでいっぱいいっぱいで、そんな彼にクワドを2本跳ばせるというのは、バーケルコーチのアイデアなんでしょうか?ゴゴレフ君もブライアンというよりはバーケルコーチがメインのように見えます。

      一方、ジュンファン君や羽生君はブライアンで、それは演技を見ていてもはっきり分かりますが、クリケットもかなり大きくなってきて、ブライアンがタッチしていない選手も相当数いそうです。

  2. sennin より:

    今回の男子はレベルが高かったですね。あとやはりロシアのジュニアが強敵?ロシアには10歳の選手対象の試合があって、たまたま動画でみたら優勝した子、日本の男子ではあり得ない技術と表現で、つまりノービスにも沢山控えているのでは?と思ってます。

    ダニエリャン、確かに一寸ハビに似てるかな?2018のワールドで銀メダルをとりませんでしたかね?

    私も、またロミジュリ?って感じました。女子も多いですけど演じやすいんでしょうか?

    島田君は体幹強化したんでしょうね。頼もしいです。海外生活で苦労されたでしょうが成果がでてよかった。それにしてもあの可愛いかおで挨拶の時の怖いこと、笑っちゃいます。GPF進出がどうなるかとそればかり考えています。ロシアとアメリカでは、女子と同じでは?日本も入りますように…。実力的には高志郎君で。

    • Jun より:

      senninさま

      おっしゃる通り、ダニエリャンは今年の世界ジュニア銀の選手です。優勝はシニアに転向した同じロシアのイェロホフでした。

      島田君については、ホント、語りたいことがたくさんありますよね。パフォーマンスがよくなったこともそうですが、以前ご紹介した合宿インタでの受け答えの滑らかさもそうですし、この試合でいうと、個人的に「前髪の長さ」もポイントだなと思っています。

      日本にいたら、「邪魔だから切りなさい」と大人たちが言いそうですが、おそらくランビさんが髪の長さまで「指導」しているような気がしてなりません。ええ、もちろん、個人的願望ですよ。

      てか、日本のフィギュアスケート「文化」に不満なのは、選手の「キャラクターイメージ」作りに鈍感な所なんですよね。衣装もいわゆる「ジュニアっぽいもの」を着せられて、とにかくジャンプさえ跳べればいい、と。「チャラチャラ髪型を気にする暇があったらジャンプの練習してろ!ロシアに勝てないぞ!」とケツを叩かれているに決まってるんです。男子だけでなく、もしかしたら女子も似たようものかもしれません。

      その他にも、某大会の結果を見ても、いろんな古いしきたりや同調圧力が根強く残る閉鎖的な世界だというのがよく分かりました。若い選手はどんどん海外を目指してほしいですね。

  3. Hope より:

    初めてこのサイトを拝見しました。

    ゴロニツキー選手をJGP2016横浜大会から今日まで応援している者です。
    今更ながらですが、ゴロニツキー選手の3Aに賛辞を送って下さり有難うございます。私自身もこの時ゴロニツキー選手の3Aを初めて拝見しましたが、最初は2Aと勘違いし何度も拝見して3Aと気付きましたが、あまりに美しい3Aに驚きました。
    ゴロニツキー選手は3Aを習得するまで2年かかりましたが、それを感じさせない位美しいジャンプでした。
    また欧州選手権2020SPでも3Aを成功させ12位でしたが、1位のブレジナ選手と同じ+2・29という加点を頂き嬉しかったです。

    他の3回転については、フィリップとルッツのアテンションを取られる為早く改善して欲しいです。またスピンステップで減点や中々レベル4を揃えられなかったりと課題ですが、ゴールデンスピン2019SPでは初めてスピンステップオールレベル4を獲得した為、今後そのような試合が増える事を願います。

    とはいえゴロニツキー選手は上記のように課題はありますが、シーズンを重ねる事に点数・成績は少しずつですが確実に伸びています。国内選手権2019ではビチェンコ選手・サモヒン選手(御存知でしょうか?)を抑え初めて優勝しました(2020はコロナウイルスの為中止でした)。また欧州選手権2020は3年ぶりに出場し、17位で12位のビチェンコ選手と共に五輪シーズンの欧州選手権イスラエル男子シングルの枠を2枠維持(欧州選手権2022出場枠を19年同大会の結果を基に決めると仮定して)しました。

    また最近では、練習中に4Sを成功・4Tを着氷されました。私が初めて拝見したゴロニツキー選手の4回転である4Sは音ハメも踏まえ恐らくGOE3~4の加点を頂けると感じる程良質なジャンプに感動しました。4Tは後半やや詰まりましたが助走から空中で回転するまで力を無駄に消費しないジャンプでした。いずれも試合で投入するか不明ですが、投入し成功すれば間違いなく高い加点を得られると感じます。ただ、無理・負傷には注意して欲しいです。ゴロニツキー選手は安定感・エッジエラーが課題ですがストレスフリーで良質なジャンプを跳ばれると感じます。

    五輪シーズンのゴロニツキー選手の無事と成功を祈っております。五輪シーズンだからと恐らく多くの選手が難度を上げて挑んでくると感じますが、流されず焦らず自分のペースで進んで欲しいです。

    余談ですが、個人的にゴロニツキー選手は顔立ち・声質・雰囲気などが年齢の割には非常に大人びており(20歳です)、また姿勢も良い事から一種の美しさを覚えます。また試合も演技の出来で演技後の態度に差がない(不貞腐れたりしない)為好印象で、それらの面も踏まえて現役選手の中で最も好きなスケーターです。そのような存在がいらっしゃる事が幸運で、感謝の気持ちでいっぱいです。

    コメント欄を拝見すると、ゴロニツキー選手について書かれている方がいらっしゃらない為書かせて頂きました。
    長くなり大変申し訳ありませんでした。

    • Jun より:

      Hopeさま

      初めまして。たいへん熱のこもったコメントをありがとうございます。

      「これ、いつのJGP?」と思って自分の投稿を読み直してみると、島田君がランビさんの所に移籍してからのJGPでしたね。

      しかもこのスロベニア大会のリザルトを見るとけっこう凄いメンバーが揃っていますが、今見てもゴロニツキー選手の(特にSPの)3Aはすごく上手いと思います。以下、SPのリンクの方も貼っておきます。

      https://junjunjun2112.com/?p=1365

      その後のゴロニツキー選手の活躍の軌跡も教えていただき、ありがとうございます。

      昨シーズンはコロナの影響もあって、あんまり試合自体をチェックできていなかったので、今年はもう少しちゃんとご紹介できたらと思っています。

  4. Hope より:

    Jun様。

    遅くなってしまいましたが、ご返信有難うございます。

    私もJun様がリンクに貼って下さった時の3Aが凄いと感じ、ゴロニツキー選手の試合での3Aにおいて最も好きです。
    (練習では、3A+1e+3F・3A+3Fシークエンスなど3Aから派生させたジャンプも美しく成功させており、いつか試合で投入される事を楽しみにしています)。

    昨シーズンは、実はコロナウイルスの影響で、ゴロニツキー選手は一試合も出場する事が出来ませんでした。特に初出場を予定されていたGPSのカナダ大会の中止は、コロナウイルスという危険から神様に守られたと感じ安心しましたが、同時に機会が失われ悲しくもなり涙が溢れました。国内選手権も中止となりました。

    今シーズン(五輪シーズン)のゴロニツキー選手の初戦は、正式な発表はありませんが、例年通りで見ますと、羽生結弦選手と同じオータムクラシック2021だと思います。
    その大会まで後2ヶ月少しで、久々にゴロニツキー選手の事を応援出来ると思うと今からワクワクします。
    どうか大会が好条件の下開催される事、出場される全ての選手がベストを尽くす事が出来る事を心から祈っております。

    • Jun より:

      Hopeさま

      あのSPの冒頭の3Aは、ほとんど助走なしで跳んでいるので、超ハイレベルだと思います。比較的3Aの上手な日本やロシアの若手でも、なかなかあそこまでeffortlessに決められる人はいないですよね。

      羽生さん、今季も仙台拠点なので、オータムはちょっと分からないですね。でも、国内のB級試合だとそれはそれでけっこうな騒ぎになること必至ですので、初戦はいきなりNHK杯かもしれません。

      ゴロニツキー選手、私も注目していますので、元気な姿を見せてくれることを祈っております。