『YUZU’LL BE BACK IV』の私のレビューは「こちら」で。
スポニチの小海途良幹カメラマンと、今回の「IV」のデザインを担当した小島利之さんとの対談です。約18分ほどの動画ですが、これでも【第1回】ということなんで、まだ続きがあるようです。写真集を手元におきながら、ぜひ動画の方をご視聴ください。
以下、印象的だった部分をピックアップしておきます。
・写真集制作時は「決意表明会見前」だったが、「羽生選手の選手生活をまとめる最後の本かもしれない」「さらに特別なものにしたい」と思っていた(小海途)
・フィギュアスケートを撮影・取材する仲間たちと「価値観が似通ってしまう」ことを自戒していた。そういったものを破るために「外の風を入れるべき」と思った(小海途)
・小海途さんの写真は「ずば抜けてクリアな感じ」(小島)
・二人での最初のミーティングの際、「ジャポニズム」ということをテーマに掲げた。「羽生くんの葛藤と切なさ」「注目されているのに上手くいかない」「叫びたいのにグッと我慢している」「そういう姿に、お侍さん、ザ・日本人ということをずっと思っていたから」(小島)
・「読者は、この本を通じて羽生君の1年を思い返すものだから、『本・然』としたものではなく、ドキュメントフィルムを観るように見返して欲しかった」(小島)
・「上質な映画には文字が少ないように、『なるべく小さく、彼の身体に沿うように文字を入れていきたい』と考えた」「空間につい文字を入れてしまうと、『それは見出しだな、タイトルだな』『なんか邪魔だな』と思った。だからやめた」(小島)
『YUZU’LL BE BACK』シリーズとなって4冊出される前、その前身の『Dancing’ on The Edge―平昌フィギュア報道写真集―』は、「報道写真集」なので見出しやキャプションがそこそこ入っていたんですよね。『YUZU’LL BE BACK』という名を冠するようになってからすでに文字はかなり少なかったですが、外部デザイナーの小島さんもその路線に「賛同」したということは言えると思います。
でも、あれだけの素晴らしい写真の数々を撮影されてきた小海途カメラマンでさえ、「似通ってしまうこと」を自戒されていたのは、意外であり、納得する部分もあります。
そもそも、競技者としての羽生さんを撮影する場合、同じ試合の同じ演技しか撮影できないので、どうしても似てしまう部分もある。そうなると、数字として表れるSNS上での「いいね」なんかが気になるわけですが、我々素人の「この写真良い!」という意見に専門的知識の裏付けなんて無いので、それに応えていたら、ますます似たものを出すことになる・・・かもしれない。この辺りは、「羽生結弦展2022」の「田中・能登対談」でも語られていました。
ファンのリクエストに応えたい部分と、独自性を出したい部分とどう折り合いをつけるか。こういう葛藤って、漫画・ゲーム・メタル、あるいはラーメン・つけ麺作りに至るまで、創作者にとっての宿命かもしれません。
勝手に想像を膨らませてしまいましたが、続編が楽しみです。おそらく、写真集に秘められた「謎」が、今後さらに明らかになるのかなと思っています。
では、また明日!
Jun