リザルトは「こちら」。フィギュアスケート速報さんは「こちら」で。やや精彩を欠いている印象の二人のスケーターの現状も確認してみます。
ボーヤンのSPは79.41の7位。ヘルシンキ大会では85.97(3位)だったので、若干スコアを落としました。ジャンプ構成は、4Lz、4T、3Aという順番で、4Lzにトリプルトウをつけられなかった場合、4Tでリカバリーするという形になっています。
冒頭の4Lzで転倒がありUR判定。つづく4Tになんとかダブルトウをつけてコンボ拔けは回避。3Aはキレイに決めました。ちなみにヘルシンキでは、冒頭の4Lzでお手付きしながらも根性でトリプルトウをつけているんですが、セカンドで転倒してしまいUR判定。PCSはヘルシンキの方が1.11高かったです。
さすが「真4回転時代」の先駆者の一人だけあって、ルッツ・トウループともに高さも幅もあって、クワド自体の質はまったく落ちていません。その点で言うと、例えば、コリヤダよりも状態は悪くなさそうです。ただ、着氷の部分で安定感を欠いているので、コンボをつけるにも苦労しているように見えます。
ところで、このプログラムの原曲のWhile My Guitar Gently Weepsは、もともとはビートルズの「ホワイト・アルバム」に収録されていて、ウチにもこのアルバムはあるんですが、このプロを見る前は「これをフィギュアでやるの?」と驚いていました。実際は別のアーティストのカバーだったので、なんだかゲイリー・ムーアみたいな完全なギターソングになっていますが(エアギターの振り付けもありますしね)、ボーヤンのスケーティング自体はものすごくスピードが出ていて、身体のキレもある。スコアだけ見ると不調に思えるのですが、コンディション自体は悪くなさそうです。
ビートルズの「ホワイト」というと、パトリックのビートルズ・メドレー(16-17シーズンSP)がこのアルバムから、Dear PrudenceとBlackbirdというマニア心をくすぐる選曲でビックリした記憶がありますが、久々にPちゃんの滑りを見たら、当たり前だけどジャンプもスケーティングもやっぱり質が高いですね(笑)。
引退を表明したハビや、Pさん、ボーヤン、ネイサン、そんな彼らが比較的好調な中で羽生君と競っていた16-17シーズン(とくにマルセイユファイナルやヘルシンキワールド)は興奮させられました。「あの頃は良かった」的な昔話をすると年寄りみたいで嫌ですが、現在、明らかにライバルのレベルが落ちているのは残念です。
フリーは129.48の10位。合計208.89の10位。ヘルシンキのフリーは141.31(5位)で、合計227.28の5位でした。
冒頭の4LzはGOE+3.12の素晴らしいジャンプで、とくにこの動画だと真正面からのアングルなので、いかに彼のジャンプが高いかがはっきり分かります。このルッツはヘルシンキでも+3.29の加点を叩き出していました。しかし、4S、4Tを予定していた2本がともにダブルにパンクしてから、緊張の糸がプツンと切れてしまったように見えます。ヘルシンキではこの2本のクワドを転倒しながらも踏ん張っていました。ヘルシンキと共通しているのは、後半の2本のアクセルを失敗している点。ショートの3Aはうまく入っているのに、フリーでここまでミスを連発する理由がよく分からないですね。
このフリープログラムはフラメンコ風の選曲で、彼にとってはまた新しいチャレンジですが、ここまでジャンプが決まらないと、なかなか表現面まで見てもらえないですよね。四大陸あるいはワールドまでにはまとめられることを願っています。「新世代のクワドジャンパー」ということで、昨日取り上げたネイサンと比較されることがよくありますが、今季は、フリーの出来で大きく差がついてしまっているようです。
デニス(ラトデニ)君。SPは82.30の6位。NHK杯では、ルッツにセカンドがつけられなくて、コンボ拔けの失点で72.39(7位)でした。プロトコルをチェックする前に映像だけを見ていたら、この美しい3Aが回転不足なんて信じられないわけですが、NHK杯でもアクセルはUR判定なので、着氷に問題があるんですかね?いやぁ・・・わからないなぁ。
デニス君の蛍光イエローのパンツから想像がつきますが、原曲はこんな感じです。私は、60年代~70年代のソウルミュージックはまったく知らないですが、2シーズン前のSPにジミヘンを採用していたし、ランビさんは、オールドスタイルのロックあるいはポピュラー・ミュージックがデニス君には合うと考えているのでしょうね。
そして、これはデニス君に限らず島田君もそうなんですけど、同じ衣装をランビさんに着せて同じプログラムを演じてもらってもまったく違和感が無いというか、その幻影を追ってしまいます。今年のFaOIの演者の中で、ランビさんは3本の指に入るかっこよさだったと思っているんですけど、私ですら弟子たちの演技に対してそう感じるのだから、熱狂的なランビさんのファンの皆さまに、そういう感情が沸いてきても不思議じゃないです。
でも、これは決して真似とかコピーではなく、継承ということなんだと思っています。実際、弟子の二人は、フィギュアスケート界でもトップクラスの「モデル体型」の持ち主で、ランビプロを誰でも滑りこなせるわけじゃありません。師匠と弟子がスケーターとして「バリバリ現役」というのはなかなか無いことで、私たちは貴重な瞬間に立ち会えているのかもしれません。個人的には、「楽しまなきゃ損だろ!」という感じで、彼らの成長を見守っています。
フリーは138.96の7位。合計221.26の7位。NHK杯のフリーは125.21(8位)で、合計197.60の8位。フリーの冒頭に4Tを一本だけ入れていますが、転倒とUR。このクワドは、N杯では両足着氷&DGだったので、まだまだこれからという感じです。
フリーでの苦戦が原因で、順位が伸びないという点では、ボーヤンと共通します。ただ、ボーヤンのように4クワド・アクセル2本とチャレンジしてゴッソリ失点というわけではなく、彼の実力からすると、冒頭の4T以外はクリーンに滑りきってもおかしくない構成のはずなんですが・・・。シングルに拔けたアクセル以降、後半は多少持ち直しますが、ショートの出来が比較的良いだけにもったいないです。
ちなみに、さっきの話と矛盾するかもしれないですが、さすがにこのラストサムライの衣装はランビさんのイメージとはまったくかぶりませんね(笑)。そう考えると、意図的に自分がやらないようなプログラムをフリーとして作ったのかもしれません。
明日は、現在開催中の「タリン・トロフィー」のレビューを予定しています。ややマイナーな大会ですが、有力選手も顔を揃えているので、チェックしてみたいと思います。
では、また明日!
Jun
コメント
ブログ更新ありがとうございます
junさんが仰るように、羽生くんとはレベルの差がありましたね
パトリックやハビが居ないと、戦う羽生くんも自分を奮起させるには、自分のレベルを上げないといけなくなりました
今はジャッジと言う違う心配がありますが…
マスコミが色々煽っても白けてしまいます
女子の点数と男子の点数が、あまり変わらなくなってきて、男子しっかりしないと追い抜かされてしまうかも?(笑)
ハビも引退表明されたし、羽生くんもファイル欠場発表ありましたね
羽生くんは記者会見で言っていたので、スケ連の都合なんでしょうね
羽生くんの足は手術したらもっと良くなるかと思いましたが、ちょっとした事で調子が悪くなるって野球選手の話がありました
場所も違うので、詳しくは分かりませんが、思っていたよりは良かったとオーサーコーチが言ってましたね
来年まで羽生くんには会えませんが、きっと素晴らしい演技を見せてくれますね
おのさま
羽生君とバリバリ競い合っていた頃のパトリックについては、「腕が棒のようだ」とか「衣装が休日のおっさん風だ」とか、ケチをつけながら私も見ていたんですけど、いまシニアで台乗りするような選手と比べても、スケーティングスピードは段違いの速さで、しかも軌道が滑らか。ちょっとレベルが違うな・・・と感じます。よく転ぶイメージがありましたが、4Tは高さも幅も申し分なく、そして着氷も安定している。
おそらく平昌五輪を見ていた時期に、ブログの中で私も書いていたと思うのですが、「これぞフィギュアスケート!」という質の高いスケートを見せてくれる選手は、羽生君、ハビ、Pさんの3人しかいないという思いは、いまもあまり変わっていないですね。ボーヤンはまだまだ安定感が足りないし、ジェイソンはもっとジャンプを頑張ってほしい。
いちおう、今回のルール改正では「総合力のある選手を評価する」というISUの狙いがあると思いますが、そういう選手が出てくるのは、まだまだ先のような気がしますね。
更新ありがとうございます
ボーヤン君、調子悪いようで心配です。
北京五輪へのプレッシャーを感じるようになったんでしょうか。
今のところ彼と同等にやれそうな男子シングル選手、中国にはいないようですし。
ラトデニ君はクリスマス・オン・アイスにも来るようで、彼はほんとに日本が好きなんだと思います。バルチック艦隊の本とか「葉隠れ」も読んでるみたいで男の子ですね。
(ラトビア人として思うところがあるのかな・・・)
去年のFaoi神戸のとき、日本の名所と歴史の本(英語版)をプレボにいれたのは私です。今度は「坂の上の雲」(英語版)でもプレゼントしようかしら。
みつばち さま
デニス君は、たぶん2年前のNHK杯のインタビューで、質問に対して簡潔に、しかも分かりやすい英語を話していたのが印象的で、若いのに頭の良い選手だなと感心した記憶があります。その時も、武士だったか鎧を描いた絵を披露してくれていた気がします。
日本のことが詳しく書いてある英語の本ということだと、東京五輪が迫っているので、「英語で日本(東京)紹介事典」的なものはたくさん出ています。
今季のプログラムが「ラストサムライ」ですから、私だったら、宮本武蔵の「五輪書」の英語版とかが思い浮かびますね。
ボーヤン、飛躍の年になるかと期待していたのですが、GPSの結果は芳しくありませんでしたね。
4Lzは あんなに壁近くでないと跳べないんだろうか、とか、軌道修正してくれる人はいないのか、と思っていたのですが、どうも怪我が完治していないようですね。痛み止めを使用しており、違和感が残るとの本人談を読みました。ステップなど とても良くなっていると思うので、しっかり治して上位争いに食い込んで欲しいです。
しかし、ボーヤンが1年経っても怪我の影響を感じていることを思うと、羽生選手のロシア大会の演技がいかに凄いものか、分かりますね。
そして、junさんが仰るように、今は羽生選手のライバルが小粒ですよね。
私も たった2季前の世選が懐かしいです。
ととちゃん さま
たしかに、ボーヤンは、あの壁ギリギリの位置で4Lzを跳ぶことで、セカンドトウをつけるのを難しくしているような気がします。一本目でセカンドがつけられないと、つぎの4Tにかかるコンボへのプレッシャーが大きくなりますから、傍から見ているとリスキーだなと感じます。ただ、この構成が彼自身慣れているんだと思います。
足首がまだ完治したわけではないというインタを私もTwitterで目にしました。彼は、四年後は何としてもメダルを獲らなきゃいけない選手なので、今はあまり無理せずに、しっかり治してほしいですね。