ABEMA将棋チャンネルでの放送は「こちら」。対戦成績は、藤井竜王・名人から見て「11勝5敗2千日手」。「千日手」というのはざっくり言うと「引き分け」で、30分の休憩後に先手・後手を入れ替えての「指し直し」が行われます。王座戦は五番勝負で、3つ勝つとタイトル奪取(防衛)。持ち時間は5時間で1日制ですが、夕食休憩もあります。
第一局の会場は、神奈川県秦野市の「元湯陣屋」です。最寄り駅は小田急線の鶴巻温泉駅で、駅から徒歩4分。陣屋と言えば、将棋のタイトル戦で数々の名勝負が繰り広げられた老舗旅館なんですが、2000年代以降経営状態が悪化し、倒産の危機にあったそうです。ところが、四代目女将が事業を立て直してV字回復したという話は、様々なメディアで特集されました。
将棋の話に戻ると、永瀬王座は藤井さんが四段の頃からの「研究パートナー」として有名で、定期的に練習対局を指しています。コロナ禍以降はオンラインでの練習対局が中心のようですが、それ以前はわざわざ永瀬さんが名古屋まで足を運んでいたとか。
永瀬さんという棋士は、ある意味で「ハングリーな根性型の格闘家」のようなエピソードの持ち主。勉強が苦手なだけでなく、あらゆる習い事も何一つ人並みにできず、高校も入学して1週間で自主退学。「唯一まともにできたのが将棋だけだった」と本人は語っています。それで17歳でプロ棋士になるんだから「天才」だと思うのですが、ご自身では「将棋の才能は(他の棋士に比べたら)無い。努力しかできない」と、プロになってからも対局日以外はほぼ毎日研究会(棋士との練習対局)をビッシリ入れていて、来月31歳になりますが、当たり前のようにストイックな生活を送っています。もちろん独身です。
しかし、一方で、書道の練習はしないとか、和服は着ないとか、解説を引き受けないとか、あとは例の「マスク事件」とか、比較的「お行儀の良い人たち」の集まりの将棋界の中でも、異端と言っていいと思います。それで、けっこうアンチもいるわけですよ。でも、10歳年下の藤井さんに将棋を「教わり」に行くのだから、純粋に強くなりたいという気持ちが人一倍強いのは間違いありません。
藤井さんの八冠達成の可能性は、私の見立てでは7~8割はあると思いますが、永瀬さんがどんな作戦を準備して藤井さんを苦しめるかでしょうね。特にこの第一局は、関東の「将棋の聖地」で藤井さんが初めて将棋を指す記念すべき一局なので、取材陣も多数現地に入ることでしょう。これまでの藤井さんの対局の中でも、6年前の「29連勝フィーバー」並みの報道量になるかもしれないので、ぜひABEMAの中継の方もチェックしてみてください。
では、また明日!
Jun