まだまだ「Ice Jewels Vol.19」のレビューは続きます。今回は「『RE_PRAY』総括」からピックアップしてみます。
『宮城』は、もう思い残すことはない、と言えます。実は初日はノーミスができて、しかもほとんどほころびがなく、ハマりきったと思えたのですが、やはり2日目は間に休日があるとはいえ回復は足りてなく、最初からかなりしんどかったです。・・・1カ月間以上をかけて準備をし、やっとできたほぼパーフェクトなものを、たった1日の間で超えられるわけはないですし、初日に出しきったからこそ難しいことはわかっていました。
常設リンクではないアイスショーの場合、氷を張っている期間は毎日公演が基本ですが、今回のRE_PRAYでは異例の「休日」が設けられていました。それもこれも、全席完売確実な羽生さんのショーだからこそできることですが、「休日があったとしても100%の回復はできない」というのは、RE_PRAYの過酷さを痛感させられますよね。
この「総括」では、埼玉・佐賀・横浜・宮城と時系列でエピソードが語られていて、埼玉は運営面でまだまだ試行錯誤の部分が多く、横浜で「全てがかみあった」とのことでした。
じゃあ、次回のIce Storyも後半の公演を狙った方がいいの?と一瞬思うわけですが、でもやっぱり、初見・未知の状態でそのストーリーとスケートを堪能したいですよね。そもそも「狙って取れる」ほど、彼のショーのチケット争奪は甘くないわけで。でも、「1日目の方がコンディションがいい」というのは、なるほどなぁ・・・と、言われてみると納得です。
(今回のツアーで気がついたことの一つは)滑り込みと踊り込み、基礎体力の量と質の大切さです。ツアーを重ねるごとに良くなっていったというよりも、佐賀の後から今まで生活時間に充てていたかなりの時間を、練習方法の確立や体力と筋力面の強化に加えて、トレーニングの知識、イメージトレーニングや振付けのブラッシュアップに費やすようになりました。ゲームとかする時間もほとんどなくなりましたし、睡眠薬に頼ることが多かったのですが、体や神経の負担を考えて取らないようにしたり、睡眠をとることにも集中して頑張ったり、生活スタイルを大きく変えていきました。
・・・やっと体づくりの仕方がわかってきて、自分のポテンシャルがこんなにあったのかというか、こんなにもやってこなかったものや知らなかったことがあったのかと刺激を感じる毎日です。充実はしているけれども、できないことだらけで嫌になったりすることもありますが、ちゃんと直視して進んでいくぞと決意と覚悟を持って、次に向けて頑張ります!
羽生さんの場合、夜にリンクで練習しなきゃいけないので、昼夜逆転で睡眠時間の確保は難しいとは思います。ただ、睡眠研究の権威の柳沢正史先生によれば、「今、すごく安全でいい睡眠薬がいろいろ出ている」とのこと。この動画でも紹介されていますが、彼の研究成果が元になった「依存性がなく体にも脳にもいい睡眠薬」が発売されていて、ノーベル賞候補と言われるのも分かる気がします。
そして、羽生さんのお話を聞いていて興味深いなと思ったのは、自分自身で試行錯誤して最適解を見つけたからこそ、「まだまだやれる!」という手ごたえやモチベーションの高さを最近語ることが多いんだろうなと。これって、勉強でも言えそうですが、先生やコーチから「この方法が最適だからやれ!」と言われたとして、モチベーションを維持できるかというと難しいと思うんですよ。言われた通りのトレーニングをして、ノーミスの納得いく演技ができた。でも、言われたことを一定期間続けていると、「自分自身」というものを出したくなってくる。
真面目な選手だと、そのトレーニング方法をアレンジする方に気持ちが行きますが、もし管理型のコーチがいつも傍にいるとしたら、「もうやめたい」「他のことをやりたい」という方向に進んでしまうかもしれない。
「仙台で一人でトレーニング」という状況は、そりゃ効率性・安全性その他いろんな面から、不便なことは山ほどあるでしょうが、羽生さん自身が「次に向けて頑張る!」という気持ちを持ち続けている現状を鑑みると、良かったんだろうなと思います。
では、また明日!
Jun