・・・バトンさんはホントに、「彼は好きに滑らせてやれ」とかって言ってくれてましたけど(笑)、でもたぶん、今回この世界選手権を通してですけれども、このシーズン通して、世界選手権を通して、自分のために滑るっていうのはやっぱり素晴らしいスケーターたちと、尊敬し合えるスケーターたちと一緒に戦って、で、完璧な演技をした上で、やっぱそこで勝つことっていうのが、たぶん一番うれしいですし、それこそが自分のために一番なるんじゃないかなっていうのに気がついたので、ある意味また…うん、原点に戻れたのかなっていう感じがしました。
・・・今こうやって、さっきも言ったように、自分の原点がやっとこのシーズン通して見えましたし、なんか…やっぱスポーツって楽しいなって。へへへへ。この、強い相手を見た時に、沸き立つような…なんだろう、ゾワッとするような感覚をもっと味わいつつ、その上で勝ちたいなって思えたので。それのためにアクセルも今はあるって感じですかね。
この羽生君の発言は、3月24日の(フリー後の)一夜明け会見(55頁)から引用したものです。「数ヶ月後には、また元のように戻っているかもしれませんよ」というトレーシーの発言をご紹介したのが「昨年10月5日の記事」でした(発言自体は昨年8月30・31日のトロントメディアデー)。その後、ロステレ杯での怪我とリハビリ、その間のネイサンの躍進、そしてさいたまで負けたことで、この発言に至ったわけですけど、もし怪我なくシーズンを過ごして、ネイサンにも勝っていたら、また違った心境だったはずです。少なくとも、いまよりメラメラモードではないことは確かでしょう。
五輪を連覇したことで、今季は「ボーナス・ステージ」「もうちょっとだけ」と言っていたはずだが、その姿は、完全に「戦う男」だった。ネイサン・チェンは、ノーミスの演技をしても勝てるかどうかという強敵であり、自分よりも年下、しかも自分を尊敬してくれている。そんな彼の存在が、羽生の心に新しい意欲を芽生えさせた。「羽生結弦」が、帰ってきた。平昌五輪の前と変わらない、戦う本能とともに生きる男が私たちの前に帰ってきたのだ。
私は、平昌五輪のフリーが行われた2018年2月17日をもって、羽生は競技者を半ば卒業したと思った。しかし、それは間違いだったようだ。羽生結弦は何よりスケートが好きで、同じようにスケートを愛する仲間と勝ち負けを決めるのが、何よりも好きだ。さいたまスーパーアリーナの氷上に私が見たのは、平昌以前となんら変わらない、戦いの場でこそ光る羽生結弦の姿だった。
この2つの引用(40頁と55頁)は山口さんのまとめです。山口さんは、今シーズン、羽生君を取材したのはさいたまワールドのみなので、かなりの驚きを持ってこの「変貌」を描写しています。ただ、オータムの頃から「最短で強くなりたい」と語っていて、その「兆候」はありましたけどね(笑)。
そうそう、49頁の3月19日公式練習(午後)で、こんな描写がありましたね。
18時33分、羽生の曲かけはフリーの『Origin』。冒頭、4回転ループで転倒する。隣で取材していた女性記者は『もうやめて』。ケガが心配なのだ。
ほう?フィギュアスケートを取材する「女性記者」なんて、あの人とかこの人とか悪質な人ばかり思い浮かぶので、そんな心優しい女性記者がいるの?と驚きでした。もうちょっとヒントが欲しかったですね。誰だろう・・・。
最後に、毛受カメラマンのコラム(57頁)は痛快でした。これまでは「多少遠慮があるかなぁ?」・・・という印象でしたが、見事な観察眼と、Yさんへの心温まるエールもありましたね。
この写真は、3月23日の11時に始まった練習の最後の最後、リンクから上がる直前をとらえたものだ。体はリンクサイドに向かいながら、目はしっかりと、あるものをにらんでいる。何を見てんのかなと思って視線の先をたどると、そこにあったのは「日の丸」だった。あの旗を今日、フリーの試合後に掲げてみせる。そんなことを考えていたのだろうか。
羽生選手を追いかける旅が続くのか、僕にはわからない。でも、これだけは言っておきたい。編集のYさん、あなたはやっぱり、羽生選手の近くにいるべきだよ。
そりゃ、山口さんの雑誌なら、「月刊羽生結弦」だろうが「週刊羽生結弦」だろうが、毎号買いたいですよ。ただ、「寝たフリ作戦」よろしく、今季のマガジンが「さいたまワールド号一冊のみ」だからこそ無茶できたというのはあるんじゃないかと。
まぁ、山口さんは状況を把握されてるはずですから、「ここぞ!」という試合で、必ずまた記者として戻ってきてくれると信じています。「眠れる獅子」の帰還を読者の一人として待っていますよ。
では、また明日!
Jun
コメント
>心優しい女性記者
私は高木恵記者しか思い浮かびませんけど。
いえ、真偽のほどはわかりませんけどもね。
以前、某経済新聞の人が、試し読みをいかが?と訪ねてこられたのですが、
◯ ◯◯記者さんのフィギュア記事を読みたくないので、試し読みけっこうです、と
丁重にお断りしたことがあります。
まぁ、本社には伝わらないでしょうけど。
マガジン=山口さん なので、次号を気長に待ちます。
シーズンに1冊でもいいですから。
そして、ライターさんより、カメラマンさんたちのほうが羽生さんのことを正当に評価
してくれているように感じるのですが。ライターさん界隈には忖度やどろどろしたものが
あっても、カメラのファインダーからは真実が見えるのでしょうか。
名無しの猫さま
報知の高木記者はマガジンの座談会にも出たことがあるので、「T記者」と表記しそうな気もしますが、まぁ、真実は分からないですね。
フィギュアスケートのライターの書いたコラムや記事が、どれもこれも「右へならえ」的であるのは、それだけこの業界が閉鎖的であることの証明ですよね。その世界でしか生きられない方々だから、そういう内容になる。一方、カメラマンの大半は、フィギュアだけ撮ってるわけじゃないですからね。私たちもその辺りを認識しながら正しく評価したいですね。
>戦いの場でこそ光る
そうなんですよね、
もちろんショーはショーで手を抜かず素晴らしい表現を見せて光っているんですが、試合の輝きは全く違う。だから現役続行がみんなこんなにも嬉しいんだと思います。
山口氏に対して羽生選手の近くにいるべきだという文の背景に、羽生選手もそれを歓迎しているから、というニュアンスもあるのでは、と勝手に捉えていました。世選前の会見で山口氏が質問したときに見せた羽生選手の笑顔が本当に嬉しそうだったので。
もちろん何より私達ファンが、何の忖度もなくありのままを伝えてくれる山口氏の存在を歓迎しているのは言うまでもありませんが、
今や 羽生選手自身にも、きちんと伝えてくれるメディアは貴重なのでは… と思っています。
ととちゃん さま
なるほど・・・。山口記者のフィギュアスケート(というか羽生君)への情熱を知っているから、というだけでなく、「羽生君とのやり取り」を実際に見てきて、毛受カメラマンがそう感じた、ということですね。それは確かに説得力がありますね。
平昌五輪後はとくに、どの記事がダメで、どの記事が高水準か、私自身はずいぶんと目利きできるようになった気がします。炎上狙いのゴミ記事は「読まない。リンクを踏まない。いちいち怒らない」ということが、ゆづファンの間でもかなり浸透してきたんじゃないかと。週刊誌のおかしな記事も減少していますし、いい傾向だと思っています。