ABEMA将棋チャンネルでの放送は「こちら」で。叡王戦では出口若武六段の挑戦を3勝0敗のストレートで退けた藤井聡太さん、今日から棋聖戦五番勝負が始まります。
挑戦者は永瀬拓矢王座。対戦成績は藤井棋聖から見て7勝3敗と引き離してはいるものの、直近2局は永瀬王座の連勝。
永瀬さんは、藤井棋聖相手であっても、序盤戦術と時間配分の両面で、優位に立てるであろうトップ棋士の一人。しかも、両者は研究仲間としてお互いの棋風をよく知っているだけに、間違いなく大接戦が予想されることでしょう。藤井さんとタイトル戦を戦ったトップ棋士と言えば、渡辺明名人と豊島将之九段がいますが、永瀬さんもこの二人に匹敵する実力者ですから、将棋ファン待望のタイトル戦が実現しました。さすがに藤井棋聖と言えども、この超難敵相手に無傷のストレートで防衛するのは至難の業。フルセットの第五局までぜひ見てみたいと私も思っています。
永瀬さんと言えば、その独特な人生哲学が面白くて、「努力次第で誰でもプロ棋士になれる」という発言は有名です。現役プロ棋士はもちろん、今後プロになる棋士でも、そのような発言をする人は未来永劫現れないと思います。
ただ、この発言は彼自身の経験に裏打ちされています。詳しくは「永瀬拓矢の感謝」というインタビューをお読みいただきたいですが、彼は、小学生の頃にいろんな習い事をしても何ひとつ上達せず、唯一将棋だけは人並みにできたのだとか。でも、当時同年代にはいまプロ棋士にもなっている、佐々木勇気七段や黒沢怜生六段のような天才がゴロゴロいて、彼らよりどんなに猛勉強しても勝てなかったそうです。
彼(佐々木勇気さん)を見ていて思ったのは、「勉強しなくても勝てるんだな」ということです。「これを天才と呼ぶんだな」と。自分の中での天才の定義は、勉強しなくても将棋で勝てることなんです。勇気さんの勉強しなさ加減はすごかったですね。でも、なぜか勝つんですよ(笑)。
勉強している自分と勉強していない彼がいい勝負。これを奨励会三段のころに感じて「世の中は不平等だな」と思いました。でもそこでひとつ勉強になりました。「これでイーブンなんだ」と。永瀬氏16歳のころの発見でした(笑)。
人生フェアじゃないんですよ、アンフェアばっかり。これを教えてもらったのは勇気さんからなんです。これを事前アンケートに載せるか迷ったんですよ(笑)。
でも逆に思ったのは、勉強していない彼が天才だとして、自分が対極にいていい勝負なら、アンフェアだとしても実はそこまでアンフェアじゃない。天賦の才がある人に対しても、地道に一歩一歩進めば肩を並べることはできるというのは大きな発見でした。
プロ棋士には誰でもなれるんですよ。何をしても人並みにでさえできなかった自分が、将棋だけは人並みにできるようになったんですから。
その永瀬さんが、「大天才なのに誰よりも謙虚に努力しているのが、藤井聡太さん」と大絶賛していて、「彼と少しでもいい勝負をしたい、そのために自分も頑張っている」といろんな所で語っています。・・・そんな二人の真剣勝負、ぜひご覧いただければと思います。
メタルジョギング・チャレンジは67日目。BOSTONの『Boston』(1976年8月)です。いわゆるキレイな音で作り込まれた「産業ロック」の元祖的バンド。ギターのトム・ショルツがMIT卒のインテリで、ヴォーカル以外は彼がほぼ全てをコントロールして録音されたデビュー作です。全米3位を記録した本作は、最終的に全世界で2,000万枚を売り上げたそうです。
・・・と、ここまではよく知られた彼らのプロフィールで、個人的にはまったく興味が無かったので、今回初めて音を聴いたんですが、予想を完全に裏切るような「ハードロックぶり」に正直ビックリしました。
たしかに、分厚いコーラスワークと親しみやすいメロディ、品のあるキーボードサウンドが中心ではあるんですが、4曲目の「Rock & Roll Band」は完全にギターが主役のアメリカンハードロックで、「へぇ、こういう曲も書けるんだ?」と驚きました。5曲目の「Smokin’」は、Queenが書きそうな曲だけど、エルビス・プレスリーのような香りも漂っていて、やっぱりアメリカのバンドなんだよなと。
どの曲も基本的に質が高くて、いやぁ、1976年って、Led ZeppelinからAerosmithから、RainbowにRush、そしてこのBostonと、レベルの高い作品がどんどん登場していて、ハードロック黄金期と言ってもいいかもしれません。
では、また明日!
Jun